編集部注:このゲスト寄稿の著者Alex Ahlundは、AppVeeとAndroidAppsの元CEOであり、後者は最近モバイルアプリ・ディレクトリーのAppoliciousに買収された。同氏は現在Appoliciousのアドバイザーを務めている。
デベロッパーからも業界外からもよく聞かれる質問がある:アプリを開発するとどのくらい儲かるのか? 答えに窮する質問である。
そこでわれわれは調査を行った。99セントから$79.99セントまでのアプリケーションを販売するデベロッパー124社に、販売データを尋ねた。この調査で対象としたのは、大成功しているアプリからやっと3桁に乗るものまで、さまざまな人気度のアプリである。デベロッパーには、出資を受け自社で複数タイトルを出している企業から、新参の一人で開発している作者までいる。一般アプリのデベロッパーもゲームデベロッパーも含まれている。このデータマイニングは、iPhoneアプリ業界全体をカバーし、飛び抜けた例外によってデータが偏ることがないことを目的としている。
さまざまな条件を考慮に入れる必要がある。製品Xがよく売れたからといって製品Yもそうなるとは限らない。長年アプリのレビューを行ってきたパブリッシャーとして、私は統計の冷酷な実データを紹介することにいつも少し懸念をもっている。将来のiPhoneアプリの正確なモノサシとしては、統計データは大きな誤解の元である。このため、読者のみなさんには業界を概要する目的でこの情報を解釈していただきたい。他の業界と同じく、そこには勝ち組もいれば負け組もその中間もいる。
以下の財務情報は、詳細な販売データと価格形態を提供してくれた96社のデベロッパーのものだ。
平均売上本数は10万1024本で、平均販売期間は261日間。1日平均売上数は387。平均価格は$5.49、ただしこの値は$49.99という外れ値によって歪められている。平均アップデート発行数は3.89で、平均開発コストは$6453。何社かは開発コストを記入しておらず、多くは数値に人件費を含めていない。外注する場合にはこの数字の5倍から10倍と考える方が安全だろう。しかし、平均で見る限り、iPhoneデベロッパーはわずかな初期開発コストによって15倍以上の利益を得ていることになる。
市場での成功は未だに頭でっかち
しかしながら、成功したアプリの上位10%をデータから取り除くと、数値はずっと小さくなり、多くのデベロッパーにとってのiPhone業界をはるかによく表すようになる。このシナリオでは、平均販売数は1万1625本、平均44本/日である。約23%のアプリが公開以来1000本以下しか売れていない(App Store掲載期間12~370日間)。また、56%のアプリが1万本以下、90%が10万本以下で、残りの10%が売上12万7000~300万本を達成している。
業界の見識ではアプリケーションのアップデートは必ずダウンロードと販売数を増加させることになっているが、Appleがアップデートされたアプリの露出方法を変更したため、今は必ずしも正しくない。アップデートしてもダウンロード数にごく小さな山しか出来なかったと何社かのデベロッパーが報告している。売上にもっと大きく影響しているのは価格を下げることのようだが、これもまた長続きはしていない。
Appleに特集してもらうことが売上急増最大の貢献要因だ。Appleのプロモーションの威力は、予想どおりデベロッパーが経験する売上増に反映されている。「ニューリリースと注目作品」のコーナーは「スタッフのおすすめ」や「What’s Hot」に比べてやや効果が小さい。一般的にいって、特集されると2~20倍の売上増加が見込まれ、平均値に戻るまで1週間程度続くと考えてよさそうだ。ここでのポイントは、この急上昇を利用してアプリをトップリストに押し上げることにある ― 全体のトップ100でも、特定部門や国内のトップリストでもよい。一たびリストに載れば、そのアプリはさらに上位へと昇り、高水準の売上を維持できるチャンスが生まれる。
マーケティングの観点でも同じ戦術が使える。特集される可能性はどのアプリも同じではないが、短い期間を区切ってプロモーションを集中することが重要だ。長期にわたってマーケティングや広告を行うのではなく、短期間(できれば何日の単位)に集中することで、アプリがトップリスト入りするための効果がずっと高くなる。
それでは具体的なアプリケーションを見てみよう。正確な理解のためには各アプリをクリックして確認することをおすすめする。プロダクションバリュー、複雑さ、ニッチ、価格それぞれによって、すばらしい売上になるか微々たるものになるかが決まる。以下のリストは集めたデータの中で売上高の範囲に含まれる50種類のアプリケーションによる。
よく使われているマーケティング技法は、Facebook、フォーラム掲載、Twitter、自社ウェブサイト、プレスリリース、LikedIn、 アプリレビューサイト、ブログ、友人、コンテスト、YouTube、広告(印刷、クリック課金、バナー)、チラシ、ニューズレター、Flashデモ、実社会ネットワーク、ポッドキャスト等。どの手法も何らかの意味でデベロッパーを手助けしているが、アプリ製品の成功を真に左右するのはAppleとその選択の手にかかっている。他の業界で成功したアプリ(タイアップ)は、その関係によって膨大な利益を得ている。同じことは、既にウェブで知られているデベロッパーについても言える。
今のiPhoneアプリの市場は、ほんの数年先どうなるかを考えると、まだ初期段階にあると言ってよい。すでに20万を超えるアプリが公開されているが、これまでのペースをみると100万になるのも遠い先の話ではない。上記の売上分析は、現状の概要を理解する出発的になるはすだが、必ずしも個々のアプリの成否を表すものではない。週末に作って何百万ドルを稼いだアプリもあれば、何ヵ月もかかって事実上売上ゼロのものもある。デベロッパーはニッチを見つけてすばらしい幸運をつかもこともできるし、高いプロダクションバリューを持つ最高の製品を生み出すこともできる。結局は、後者の方が成功への安全な道のりだ。さあ、動き始める時だ。